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【育児ノイローゼ】

著作:のりだーさん


お姉ちゃんが仕事に行っている間は,ボクが一人でお留守番です.
どんなにイタズラをしようと,怒る人はだーれもいません.
犬の育児書(愛犬の育て方なる本があるらしい)にも
“現行犯でなければ,犬は何を怒られているのかわからないので
あとから怒ることは避けるように”という記述があったそうで,
お姉ちゃんは律儀にそれを守っているのでした.


さーて,今日は何して遊ぼうかな〜?♪
ボクとしては,イタズラをしてるつもりはさらさらありません.
とにかく何に対しても興味津々のお年頃.
これは何だろう?・・・囓ってみたらどうなるのかな?・・・なるほどね〜
と一つ一つ確認して,学習しているにすぎないのです.
興味の対象が,不幸にもお姉ちゃんにとって大事な物だったり
あれもこれもと欲張ってお勉強してると,結果的に,部屋中出しっぱなしの,
散らかしっぱなしの,壊し放題という事態になるわけで・・・``r(^^;)
だから,ボクはちっとも悪くありません.(開き直るな!)


最初に好奇心の対象になるのは,やはり視界に入りやすい靴関係です.
お姉ちゃんお気に入りのパンプスにはよだれがべっとり,歯形がくっきり.
スリッパの噛み心地を堪能していると,いつの間にか原型を留めていません.
スリッパの代わりにと,お姉ちゃんがくれたボク用のぬいぐるみなんて,
かわいそうなくらい無惨な姿にしてしまいました.
だって,噛むとキューキュー鳴るんです.
中に何が入っているのか知りたいじゃありませんか?

低いところを一通り確認したら,少し高いところも見てみたくなりました.
テーブルの縁に手をかけて上を覗いてみると,新聞紙と
ボタンがいっぱい付いた四角いプラスチックの箱のような物があります.
新聞紙は噛んで引っ張ると,すぐちぎれてしまって面白くありません.
うぇ〜,ぺっぺっ!インク臭い紙が舌にくっついて気持ち悪い〜(++)
あの小さな箱は・・・?大きさも噛み応えもちょうどよさそうです.
ちょっと力を入れるとベコッ!という音とともに変形して,
ボタンが引っ込んだきりになってしまいました.
なおも噛み続けていると,パリン!とプラスチックのフタのような物が欠けました.
一体何なんだろう,これは・・・・?
それは,お姉ちゃんが帰ってきてくつろいだときに判明しました.
「あ〜〜っ!テレビのリモコンが〜!(ToT)」
それからしばらくの間,我が家のテレビは今時珍しい手動になったのです.
ボクが壊したリモコンは,テレビのものだったからまだいいのですが,
エアコンのリモコンを壊してしまった犬もいるそうです.
エアコンは,壁のたかーいところにへばりついているので,
手動で操作するのも一苦労です.
夏の暑さに弱いボクにとっては,砂漠のオアシス,救いの女神,
まさにエアコンさまさまです.
このリモコンだけは囓らないでおこうっと♪


イタズラもさることながら,お姉ちゃんを育児ノイローゼ気味にした
最大の原因は,ボクの粗相でした.
猫は比較的トイレの躾が楽だと聞きますが,ボクはなかなか覚えられません.
ボクがそわそわし出すと,お姉ちゃんがペットシーツの上に
連れて行ってくれるのですが,自分一人ではちゃんと用が足せるか
怪しいもんです.
それでも,おしっこはまだいいのですが,問題はウンチです.
きちんとシートの上でできたときでも,すぐに片づけてもらわないと
なぜか無性にブツを食べたくなってしまうのです.
だって,ボクが生まれてまもない頃は,(犬の)お母さんが
ボクのお尻をなめて,トイレをさせてくれてたんです.
だから出したそばから,ブツは視界から消えていました.
出てしまったものは仕方がない,片づけなくちゃ!でも・・・どこへ?
手っ取り早くお腹の中へしまおう!
ということで,毎回のようにきっちり片づけていたのでした.

困ったことに,ボクはお腹があまり丈夫な方ではありませんでした.
寄生虫がいるわけでもなし,ご飯が合わないわけでもなし
それなのに,すぐにお腹が緩くなるのです.
緩いブツでさえ「お片づけ」したくなるのですが,
跡形もなく・・・というわけにはいきません.
それに緩いブツは,ちょっと臭いもきついのです.
だから,片づけたつもりでも,帰ってきたお姉ちゃんに
「ピラフ,出したものはどこへやったの?」とバレてしまうのでした.


こんなふうに,毎日ピラフ台風が荒れ狂う部屋を,掃除するお姉ちゃんは
とっても大変でした.
仕事に疲れて帰った日でも,ボクの熱烈歓迎にもれなく掃除が付いてくるのです.
だんだん玄関のドアを開けるのが,恐くもなります.
帰宅拒否症とでも呼ぶべきでしょうか?
犬でも猫でも人間でも,子育ての苦労は並大抵ではありません.
お姉ちゃんにとって,ボクが最初の子(違うだろうって・・・)の割には
ずいぶん頑張っていました.
でも,ある日・・・・・・
「ピラフ,ただいま〜!」と帰ってきたお姉ちゃんが目にしたものは・・・・
囓られてボロボロになったスリッパ,駆け回った勢いで蹴倒した
ボクの食器,紙吹雪と化した新聞紙,穴が空いてミが出たクッション,
ひっくり返って中身が散乱したゴミ箱,失敗してシートからはみだした
おしっこの水たまり,そして,ブツの痕跡と異臭が残る床・・・・・・
出かける前とはあまりにも変わり果てた部屋の惨状に
お姉ちゃんはぺたりと床に座り込み,ボクを抱きしめて泣き出しました.
「なになに,そんなにボクに会いたかったのー?」
お姉ちゃんの心中をわかる術もなく,その顔を舐めたボクは,
しょっぱい味がすることに気付きました.人間って,目から塩水が出せるんだ?
「ホンマにこの子は・・・アホちゃうやろか?
鼻をすすりながらお姉ちゃんが,ボクの将来を真剣に案じているとは知らず
ボクはしっぽを振りながら,いつまでも「しょっぱい水」を
舐め続けていたのでした.



つづく?




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